星に願いを 5話




「どうです、妹さんだいぶ落ち着かれました?」
お漏らしの後片付けを終えて、泣きじゃくる理帆をなだめていると店員がカーテンを捲って声をかける。
「ええ、時間も経ったのでだいぶ落ち着いてきました。本当にすみませんでした」
和馬は休憩用のスペースから出ると改めて謝罪する。
「いいんですよ、ちゃんと後片付けもしてくださいましたし」
「いえいえ、それは当然のことですしこちらこそ、休憩室貸してもらって」
和馬は先ほど出てきた休憩室を見やる。泣きじゃくる理帆を通りかかる人から避けるさせるため貸してくれたのだ。
「いいのよ、困ったときはお互い様だから。それよりこれ、妹さんまだ濡れたおむつのままでしょ。替えてあげて」
そう言って、先ほど会計を済ませていた二つの紙おむつと、小さく膨らんだビニール袋を渡される。
和馬が袋の中身を確かめると、中にはお尻拭きとベビーパウダーが入っていた。
「あの、こんなの買ってませんでしたよね?」
「ああ、それ?いいのよ、試供品だから。遠慮せずに使ってちょうだい」
笑って言う店員に、和馬は頭を下げ、休憩室に入っていった。

「り〜ほ、お待たせ」
呼びかけながら床に座り込んでいる理帆の前に座り込み、目線の高さを少しでも揃えようとする和馬。
お漏らしからかなりの時間が経っており、理帆もようやく落ち着いてきたらしく嗚咽を漏らすだけになっている。
「かずま?」
「うん、ここにいるよ」
返事をしてやると理帆は和馬の胸に頭を預ける。
「……店員さん、怒ってた?」
「いんや、そんなことなかったよ」
「……じゃあ、和馬は?」
顔を上げることなく消え入りそうな声で聞いてくる。
「俺?怒ったりなんかしてないよ。どうして俺が怒るのさ?」
「だって、我慢できなかったし、床汚しちゃってその片付けまでしてもらったし」
理帆は再び泣き出しそうな顔で和馬の顔を見上げる。
「そんなのたいした事じゃないよ。おむつ替えてあげるの間に合わなかったのは俺のせいだし」
「和馬のせいじゃないよっ。あたしが我慢できてればあんなことにはならなかったもん」
二人は一歩も譲らずにお漏らしの原因は自分だと言い張る。
「…なんか、馬鹿みたいだな、おれら」
「……ほんとだね、なんかどうでもよくなってきちゃった」
二人して小さく笑いあう。しばらく笑っていると、理帆が身震いをする。
「ああ、そうだ。いつまでも濡れたおむつじゃ気持ち悪いよな、新しいおむつに替えようか」
「…うん、べちゃべちゃして気持ち悪い。脱いじゃうね」
ばつが悪そうに理帆が立ち上がると、おしっこの重みで垂れ下がったおむつがスカートの裾から現れる。
「あっ、落ちちゃう。ねぇ和馬、どうしよう」
重みに引かれそのまま床に落ちそうになったおむつをどうにか両手で押さえる理帆。
おむつの説明を読んでいた和馬はおもむろにおむつのサイド部分に手をかける。
「和馬?なにするの」
「なんかな、両サイド破ると簡単に外せるらしいぞ」
言いながらサイド部分の継ぎ目を破いていく。
「ほら、下から持ってるから手ぇ放していいぞ」
股の部分を持ち上げるように和馬が手を添える。理帆は言われるままにおむつから手を放す。
おむつの上の部分を持っていた理帆の手が放されたため、サイドを破かれたおむつは大きく広がる。
和馬と理帆の眼前に黄色く染まったおむつの中があらわになる。
「すごいな、白いとこがぜんぜん無い。いっぱい出たな理帆」
「ばっ、ばかぁ。そんなにじろじろ見ないでよぉ」
理帆としてはお漏らしの証拠のおむつはさっさとしまって欲しいのだが和馬はそんなことは知らずに眺めている。
「それにほら、理帆のここもおしっこで濡れちゃったね」
スカートを濡らさない様に大きくたくし上げている理帆の股間は和馬の目の前に隠されること無く広がっている。
「しっかし、ほんとに子供になっちゃたんだなぁ。なんかシンプルになってるし、ツルツルになってるし」
「やだぁ、言わないでよぉ……くちゅっ」
チャンスとばかりに理帆の秘所を眺める。しかし、理帆が小さくくしゃみをしたのを聞き正気に戻る。
「ああ、ごめん寒いよな。今拭いてやるから」
和馬は慌てて店員から貰ったお尻拭きを取り出し理帆の腰周りを拭いていく。
「…ん、気持ちいい」
「そっか、なんかいい匂いするな、これ」
丁寧に腰周りを拭き終え、和馬はベビーパウダーの缶を開ける。
「それは?」
「ん?ベビーパウダーだよ。かぶれると嫌だろ?」
答えながら、パフを使ってパウダーを塗していく。時々くすぐったそうに理帆が身をくねらせる。
「こら、じっとしてろって」
「だってぇ、くすぐったいんだもん」
くすぐったがる理帆に苦戦しながらも、どうにかパウダーを塗し終えた和馬は理帆の前に二つのおむつを差し出す。
「んじゃ、理帆の穿きたいほう選んで。どっちもそんなに違わないみたいだし」
一つは有名なクマのキャラクターの描かれたピンク地のおむつ。
もう一つもピンク地だが、キャラクターなどは描かれていない、シンプルな外見のおむつ。
「そのシンプルなほうが薄くて目立ちにくいってさ。吸収量はそんなに変わらないみたいだぞ」
「このクマのやつってさっき穿いてたのと一緒だよね?」
「…そうだな、ちょっと柄が違うけど一緒なやつみたいだな」
二つのおむつを交互に広げたりして感触を確かめていた理帆はシンプルな方を手にする。
「それじゃあ、こっちにするね……あっち向いてて」
おむつを広げ足を通そうとした理帆は、和馬が見ているのに気付き違う所を見るように言う。
「いいじゃんかよぉ、見てたって」
諦めのつかない口調で和馬は文句を言いながら渋々理帆に背中を向ける。
(まったく、何考えてるのかしら。おむつ穿くのがどれだけ恥ずかしいか……)
転ばないように慎重に足を通しながら、和馬への文句を呟く。
(……あっ、これすごく薄い。肌触りもすごくいいし、こんなのもあるんだ)
新しいおむつの感触を確かめようと、理帆はスカートの上から何度もおむつを触る。
「なぁ、理帆、まだか?……何やってんの」
おむつの感触に夢中になっていた理帆は、和馬が振り返っているのに気付けずその場面を見られてしまう。
「!?なっ、なんでもないっ。…なに笑ってるの」
「いやぁ、理帆もおむつが好きになったなって思ってさ」
気まずさに和馬から目を背けていた理帆だったが、和馬が笑っているのに気付き文句を言う。
「しょ、しょうがないでしょ。パンツの代わりなんだから肌触りとか気になるんだもん」
必死になって反論する理帆に和馬は「そんなこと言ってないだろ」と言って理帆の頭に手を置く。
「う〜、そうやって子供扱いする〜」
頭を何度も撫でられながら文句は言っているが、顔は非常にうれしそうに緩んでいる。
「さて、おむつも替えたしご飯でも食べに行こうか」
「うん、でもその前に店員さんにお礼言ってくるね」
言うが早いか理帆はカーテンをくぐって店員の下に向かっていた。
「はぁ、すっかり元気になっちゃって。おおい待てって」
すっかり元気になった理帆を和馬も両手に紙おむつを持って追いかけるのだった。

「しっかし、いっぱい買ったなぁ」
食事も終え、理帆に必要な物を買いにデパートの中を回っていたのだが、和馬の手には持ちきれないほどの荷物が下げられている。
「そぉ?まだ買い足りないけど持ちきれないからね」
「…持ってるのは、ほとんど俺だがな」
確かに和馬の言うとおり、理帆は紙おむつの袋を一つ持っている以外は小さな紙袋を持っているだけ。
一方和馬は、紙おむつの袋のほかに大量の紙袋を持っている。
「だってしょうがないじゃない。あたしが持ったら引きずるからって和馬が持ったんじゃない」
「確かにそうは言ったけどな、少しは遠慮して買ってくれてもいいんじゃないのか?」
理帆の買い物に付き合ってすでに一時間以上が経っていて、和馬の腕もそろそろ限界に近い。
「そうねぇ、そろそろお財布の中身も厳しいしこの辺にしとこうかしら」
財布の中身を見ながらの言葉に、和馬は思わずため息をつく。
「よし、それじゃあ帰ろうぜ。お腹空いただろ?」
「うん、ちょっと空いたかも。あっ、和馬、ソフトクリームだって」
出口付近の一角に、目立つように装飾されたコーナーが目に入る。
「そうだな、ちょうどおやつ時だしいいかもな。なにがいい?」
「ん〜、それじゃあ、チョコ〜」
しばらくメニューを見ていた理帆は悩んだ挙句、うれしそうにそう告げる。
「おっけ、そんじゃここで待ってて」
財布の中身を確認し、目立つ場所に理帆を待たせると、和馬は列に並ぶ。
「ふぅ、ちょっと疲れたかな。歩きっぱなしだったし」
壁にもたれかかった理帆は荷物を足元に置き、凝った肩を回す。
「やっぱり、体が小さいと勝手が違うな〜。目線の高さが違うから歩きにくいし」
買い物をしている最中、何度か前から歩いてくる人にぶつかりそうになったことがあったのを思い出す。
(それにしても、さっきからなんか歩いてる人の視線を感じるのよね)
壁にもたれかかっていることを除いても、足元の荷物などで確かに目立っている。
さらに言えば、荷物の中の紙おむつのパッケージも目立つ要因だろう。
(もしかして、おむつしてるのばれてるのかしら?袋も足元にあるし)
俯きながらそんなことを考えていると、目の前を通った親子連れが理帆の方を見ながら何かを言っている。
(何?やっぱり、おむつしてることに気づいてる?)
実際、理帆くらいの年の子供がおむつを持っていれば誰もが不思議に思うことだろう。
まして、理帆のスカートはおむつによって膨れていて、誰から見てもおむつをしていることは明らかだった。
(やだ、ほんとにみんな気づいてるの?こんな年にもなっておむつしてるなんて、恥ずかしい)
周りの人の視線が全て、自分の腰周りに注がれているように感じ、理帆は急速に羞恥心を感じる。
(かずまぁ、早く帰ってきてよぉ)
羞恥心に耐えれなくなった理帆は、泣き出しそうになるのを下を向きながら必死に堪える。
「りほ〜、お待たせ、ってどうした?」
「かずまっ、……かずま〜」
ソフトクリームを持って帰ってきた和馬に、理帆はタックルに近い勢いで抱きつく。
「ちょっ、どうしたんだよ。ほら、みんな見てるから離れろ、な?」
「・・・・・・やだぁ・・・・・・」
片手が塞がっているため抱きしめてやることもできず、口で説得させるがそれも失敗に終わる。
「・・・はぁ、落ち着くまでだからな。それで、なんかあった?」
先程とは変わり、抱きつかれた格好のまま和馬が行き交う人々の視線を浴びる。
和馬も視線を浴びるのは嫌なので、体を回し理帆を壁側へと移動させる。
「それで、どうしたんだ?・・・おむつは濡れてないみたいだし」
人が見てないのをいいことに、和馬は理帆のおむつの中に手を差し入れ、濡れていないかを確かめる。
「う・・・ん。おしっこはしてないよ・・・・・・か、和馬、何してるのよ」
「なにって、理帆がおむつ濡らしてないか確かめてんだけど」
「そんなこと、確かめなくてもおしっこなんか漏らしてないっ」
差し入れたままの和馬の手を理穂は強引に引き抜き、自分の手を入れなおす。
「んで、何してんの?」
「和馬が手ぇ入れるから変な感じになったの」
言いながら、おむつの中で手を動かし一番いい感触になるようにする。
「そんなに違うもんなのか?」
「ぜんぜん違うよ、もこもこしてるから普通のパンツみたいにならないの」
直し終えた理帆は、力説しながらソフトクリームを受け取る。
「そんなもんか、それよりそろそろ帰るけど、トイレ行っとかなくて大丈夫か?」
「・・・ん〜、らいじょうぶらよ」
(・・・・・・ほんとに大丈夫か?まあ、いざとなればおむつしてるから安心か)
ソフトクリームを舐めながら上の空で返事をする理帆に不安を覚えつつ和馬は歩き出したのだった。

「理帆?そろそろ寝ようか」
夕食を終え、お風呂にも入り、二人でテレビを見ていると理帆が眠たそうにしているのに気付き和馬が声をかける。
「ん〜、まだ大丈夫だよ〜」
言いながらも眠そうに目をこする理帆。時計は10時過ぎを指していた。
普段なら平気で起きている時間なのだが、恐らく小さく影響なのだろう。
「今日はいろいろあったからな、俺も眠いし一緒に寝よう。な?」
「う〜、わかった〜」
和馬が説得すると、だるそうに言いながら両手を差し出してくる理帆。
「ん?どうした」
「だっこ〜」
差し出された両手の意味を考えていると、理帆が小さい子供のようにだっこをせがんでくる。
「は〜、しょうがないな。しっかりつかまってろよ」
どのみち、理帆をベッドで寝かせるにはだっこをするしか方法が無かったため和馬は理帆を抱き上げる。
(これくらいの年の子ってこんなに軽いのか。それにとっても細いし)
「かずまぁ?」
「あぁ、ごめん。ところで理帆、おむつは濡れてないか?」
あまりの理帆の軽さに考え込んでいたことをごまかすようにパジャマ越しに理帆のおむつに触れる。
「んっ、やだぁ、…触んないでぇ」
首に回していた手を外して触っている和馬の手を払いのける。
「だって触んないとわかんないだろ?だったら理帆が教えてくれよ」
和馬としても理帆のおむつのことには極力触れたくはない。
だが濡れたおむつのまま寝させるわけにもいかない。そこで理帆が嫌がるのを承知で聞いているのだった。
「……あ、のね。さっきうとうとしてた時に少しだけ出ちゃっみたいなの」
理帆も自分を気遣う和馬の気持ちは痛いほどわかっているので、寝ぼけていても素直に答える。
「そんじゃ、ズボン脱いで待ってて。おむつどれがいい?」
理帆をベッドに下ろし、おむつを一枚ずつ持ってくる。
「んと、クマのやつがいいな」
ズボンを脱ぎ終え、膨らんだおむつを触りながら理帆が答える。
そんな理帆を見ながら、和馬は穿きやすいようにおむつを手で広げる。
「それじゃあ理帆、濡れちゃったおむつ脱ごうか」
「……うん…」
昼間は嫌がった和馬の前でのおむつ替えだが、寝ぼけているため抵抗無くおむつをずり下げていく。
膝の辺りまで下げたところで、体育座りの格好になりおむつを両足から抜き取る。
「かずま〜、とれたよぉ」
「よし、それじゃあタオルで拭くから、くすぐったいの我慢な」
理帆からおむつを受け取り、開かれた足の間にタオルを差し入れ優しく拭いていく。
「んんっ、くすぐったいよぉ…」
理帆の言うことには耳を貸さずに、腰を持ち上げお尻の方も手際良く拭いていく。
一通り拭き終えたのを確認すると理帆に動く隙を与えずに、新しいおむつを両足に通す。
「ほら理帆、お尻上げて」
和馬の指示に理帆は黙ってお尻を持ち上げる。そこに和馬が一気におむつを腰まで持ち上げる。
さらにおむつの中に手を入れしっかりとギャザーが立てる。昼間と比べると見違えるような手際だった。
「り〜ほ、出来たよ。ほらズボン穿いて、風邪引くよ」
新しいおむつに包まれ眠くなったのか、理帆はすっかり目を閉じていた。
それでも、和馬の呼びかけに反応しなんとかズボンを腰まで引き上げた。
「それじゃあ、俺も寝るかな。理帆、おやすみ」
「……んぅ、……すみ…」
すっかり寝付いた理帆の隣に横になり、部屋の電気を消す。
和馬の言葉に反応したのか、中途半端な挨拶をする理帆。
そんな理帆の髪を撫でながら、大変だった一日を振り返り和馬も眠りについたのだった。


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