星に願いを 1話




今日彼と喧嘩をした。
いつものように彼の部屋でお酒を飲みながら話をしていた。
いつもは聞き役に回る彼が珍しく話すから、私が聞き役に回ったの。
はじめのうちは学校であったことや、サークルの話だった。
でも、彼が酔ううちにバイト先の話になった。
はじめは特に気にしなかったけど、話すのは後輩の高校生の女の子のことばかり。
私は、酔ってるからしょうがないなと我慢してたけど彼のその一言に我慢が限界を超えた。
「やっぱり、年下の女の子ってかわいいよなぁ」
彼は何も考えないで言ってるんだろうけど、私にしてみればかなり強烈な一言だった。
私は相槌を打つのをやめて無言で目の前のコップを見つめた。
彼も黙り込んだ私に気付いて声をかけてくるけどもちろん無視を決め込んだ。
「なあ、なに怒ってんの?」
彼の無神経な言葉に私は思わずコップを掴んで中身を彼の顔にかけていた。
「うるさいわよっ、ばかぁっ」
捨て台詞を残して私はベッドに飛び込み、布団をかぶる。
彼が必死になって何かを言っていたけど、私は全ての言葉を無視して目を閉じた。

私と彼は同じ大学に通っている。
付き合うようになってもうすぐ一年になる。
付き合うようになったきっかけは私が告白したから。
今まで一度もそういうことに縁の無かった私にとって告白するだけでも大事件だった。
そのうえ相手が年下なんて思いもしなかった。今思えば友達にはめられたのかもしれない。
ろくに話もしないうちに告白したのに彼はなぜかOKしてくれた。彼が年下だと知ったのはそのあとだった。
彼は私が年上だということ特に気にはしていないようだった。いつでも対等であろうとしてくれた。
それで、自然とお互いを求め合うようになった。初めてだった私を彼は優しく抱きしめてくれた。
もちろん今日みたいなことが無かったわけじゃない。今思えばどうしてあんなに彼の言葉が頭にきたのだろう。

「ん・・・今何時?」
いつの間にか眠っていた私は吹き込んだ風の冷たさに目を覚ました。時計を見るとまだ午前二時だった。
「そうだ、彼は?・・・もう、こんなところで寝ちゃって。風邪引くわよ」
意識がはっきりとしたところで彼を探すと、テーブルに突っ伏して眠っていた。
私は彼が風邪を引かないようにブランケットをかけてから、ベランダに出てみた。
「わぁ、星がきれい・・・」
ここ東京で今まで見たことも無いくらいの星が夜空に瞬いていた。
「・・・あ、流れ星。流星群かな?」
目を凝らすと流れ星がいくつも目に止まる。私は目をつむり小さな声でつぶやく。
「もし、叶うなら彼と出会うもっと前の私で今をやり直したい・・・なんちゃって」
無意識のうちに出た言葉に軽く驚き、軽口でごまかす。
「さって、寒くなってきたし寝よっかなぁ」
部屋に入る瞬間、星たちが少し強く光ったことに私は気づくことも無く、再び眠りに落ちたのだった。


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