Days〜二人の日常〜 3話




「ん・・・まぶしいな」
カーテンを閉めていなかった窓から差し込んだ朝日を顔に浴び拓が目を覚ます。
「なんだ、もう起きる時間かよ、・・・唯起こしに行かないと、って・・え?」
鳴り出す前の目覚ましを止め起き上がろうとしてそのまま動きを止めてしまう。
それもそのはず、拓の隣には唯が幸せそうに寝ていたからだ。しかもパジャマ代わりのシャツはボタンが外れ
かろうじて胸を隠しているがそれ以外の部分は全て見えていて、特に下着はほとんど丸見えだった。
「な、なんで唯が俺のベッドで寝てるんだ?しかもこの格好・・・俺がやったんじゃないよな」
気持ちよさそうに寝込んでいる唯を前に思わず考え込んでしまう。
(・・・それにしても、さすがにこんな格好してたら風邪引いちゃうよな、
 せめてシャツくらい掛けといてやらないと・・決してやましい気持ちがあるわけじゃないからな。
 そう、唯が風邪を引かないようにするんだから・・)
拓は自分にそう言い聞かせながらめくれ上がったシャツへとゆっくりと手を伸ばす
「んっ・・んうっ・・・」
シャツに触れようとした時、横向きに寝ていた唯が寝返りを打ち仰向けになる。
そのせいでかろうじて胸を隠していたシャツが体から落ち、唯のわずかな膨らみが見えてしまい拓はそのままの格好で固まってしまう。
「・・・まったく、何でこいつは寝相が悪いかなぁ。と、とにかくシャツを元に戻さないと。俺が疑われるからな」
などと言いつつ拓の視線は唯の体に向かってしまう。
「それにしても・・ほんとにちっこいよなぁ。身長もだけど、胸が。立ってると少しはあるように見えるけど
 こうして寝てるとほとんどまっ平らだもんな。まあ、唯の身長とバランスが取れてていいってゆうか」
シャツの端を掴みながらそんな事をつぶやいていると、不意に唯が目を覚ます。
「んっ、兄・・さん?おはよ〜・・・今、何時?」
寝ぼけた顔で拓を見つけると、唯は間延びした口調でそう聞いてくる。
「あっああ、おはよう。えっとな、7時ちょうどだぞ」
突然の事に慌てながらも冷静に答え、同時にシャツから手を離す。
唯はシャツを掴んでいた事に気がつかなかったのか
「えっ、もうそんな時間?急いでご飯の準備しなくちゃ。すぐ朝ご飯にするからちょっと待っててね」
と言って、ボタンが外れているのにも気付かずに部屋を出て行く。
「・・朝から元気なやつだな。しっかし前がはだけているのに気付かないとはな・・・顔でも洗うか」
そう呟き立ち上がるのと同時に唯の叫び声が聞こえてくる。
拓はため息を吐いてから部屋を出て行った。


「ところで、唯はどうして俺のベッドで寝てたんだ?」
朝食のトーストを頬張りながら、なぜ自分のベッドで寝ていたのかを拓が唯に訊ねる。
「え?えっとぉ、それは〜そのぉ・・」
訊ねられた唯はそう呟くと顔を真っ赤にして俯いてしまう。
俯いたまま答えにくそうにしている唯に
「・・あ〜っと、まあ言いたくないなら別に言わなくてもいいぞ。別に気にしてないしな」
と言って気まずさを紛らわすように拓はコーヒーを飲み干す。
しばらく俯いていた唯だったが意を決したように顔を上げると
「あの・・ね、その、最初は自分の部屋で寝てたんだけど、なかなか寝付けなくて
 それで兄さんと一緒なら寝れるかな〜って思って兄さんの部屋に行ったんだけど
 兄さんもう寝ちゃってたから黙って潜り込んだの」
真っ赤な顔でそう言い、カップで顔を隠すように牛乳を飲む。
拓は腕を組んでしばらく考えていたが
「・・・そうだなぁ、まあ唯が一緒に寝たいんなら別に俺はいいけど。でも一応男と女なんだし、
 その辺は考えるようにな。あと、黙って潜り込まないこと。朝起きた時に驚くから。いいな?」
といつになくまじめな口調で言う。
その言葉を聞くと唯は満面の笑みを浮かべながら
「うん、わかった。これからはちゃんと兄さんに言ってから布団に入るようにするね」
と答える。拓は唯の言葉にうなずくと
「さってと、それじゃ少し早いけどそろそろ行くか」
といって立ち上がる。食器を片付けようとしていた唯は
「えっ?もう行くの。ちょっと待ってて、お皿片付けちゃうから」
と言って慌てて片付けを始める。
「いや、別にそんなに急がなくても。時間に余裕はあるから」
と拓が言っても唯のペースは下がらずあっという間に片付けを終え玄関で待っていた拓の隣に立つ。
「おまたせっ、それじゃあ行こう」
「よし、行くか。・・・あっ、忘れ物とか無いか?」
「だっ大丈夫だよぅ。私もう子供じゃないんだから〜」
と言いつつも拓に言われて不安になったのか鞄の中身を確認し始める。
「え〜っと、・・・うん、大丈夫だよ。行こう、兄さん」
唯がそう言ったのは3分後だった。


「今日もいい天気だね、兄さん」
前を気持ちよさそうに歩いていた唯が言いながら振り返る。
朝陽を背に立つ唯をまぶしそうに見つめながら
「そうだな、もうすっかり夏だしなぁ。・・・これからどんどん暑くなるなぁ・・はぁ」
と言って、これから来る夏の暑さを想像し溜め息をつく。
溜め息をつく拓を見て、首を傾げながら
「ん?兄さんどうしたの溜め息なんかついて。・・もしかして夏苦手なの?」
と意外そうに聞いてくる。歩調を落とした唯に並び
「・・苦手ってゆうか夏自体は嫌いじゃないんだけど、ただ暑いのがな〜」
とつぶやく。唯はその言葉を聞き、その子供じみた理由に思わず笑い出す。
「な、なんだよ急に笑い出したりして。大丈夫か?」
突然笑い出した唯に驚いた拓は訳が分からず声を掛ける。
「ううん。なんでもないよ、ただ・・」
「ただ?」
「うん、兄さんの夏嫌いの理由が子供っぽくてつい」
そう言って笑いをこらえる唯を見ながら
「子供っぽいか?暑いから夏が嫌って普通だと思うんだけどな」
と小声でつぶやく。すると突然後ろから
「何が普通なのかな?二人とも」
と声を掛けられる。二人が同時に振り向くと、二人のやり取りを見ていたのか綾乃が笑いながら立っていた。
「誰かと思ったら、綾乃だったのか。おはよう」
「あっ綾乃さん。おはようございます」
「おはよう、水島君、唯ちゃん」
綾乃は二人に追いつくと拓の横に並んで歩き出す。
「それにしても、今日はずいぶん早いね。どうしたの?」
時計を確かめてそう訊ねる綾乃に
「いや、俺が早く登校してるからってそんなに驚かなくても。今日はほら、唯の転校初日だし色々案内も
 してやらないといけないからさ」
と唯の頭に手をのせながら言う。
「あっ、もう兄さんったらせっかく髪きれいにしたのに〜」
と拓の手をどけ髪を整える唯。二人のそんなじゃれあう様子を見て、綾乃は軽く微笑む。
するとその様子に気付いた唯が
「?どうしたの綾乃さん。なんかすごく楽しそう」
「うん、二人を見てたらなんか楽しくなってきちゃって」
とクスクス笑いながら綾乃は答える。二人はその言葉にお互いの顔を見ながら首を傾げる。
「二人とも本当に最近知り合ったの?なんかずっと前から兄妹みたいに見えるんだけどなぁ」
そんな綾乃の言葉に
「そんな風に見えるか?まあ最初から違和感は無かったよな」
「うん、それは私も同じだよ。今までどうりってゆうか」
と二人が同じ様なことを言う。
綾乃は興味深そうに頷き、再び微笑む。
「でも、そうゆうのっていいなぁ。私一人っ子だからあこがれちゃうな」
そう言って二人を見る。
「そう言えば前にそんな事言ってたな。でも、まあ俺たちも元は一人っ子だし、似たようなもんだな」
と拓が呟く。その言葉に綾乃も唯も頷く。


「そうだ、ねぇ水島君。今日も一緒にお昼食べない?もちろん唯ちゃんもね」
学校へと続く並木道に入った辺りで綾乃がそう切り出す。拓は特に考えることもなく
「ああ、いいよ。唯はどうする?」
と答え唯を見る
「うん、わたしもいいよ。あ、それと兄さん。はい、お弁当」
言いながら持っていた包みの一つを拓に差し出す。
「おお、サンキュー。しかし、あんまり時間無かったのによく作ってる時間あったな」
差し出された包みを受け取りながらそう言うと
「う〜、その事なんだけど。今朝は時間があんまり無かったからおかずはレンジで温めただけなの。
 ごめんね、本当はもっと作りこもうと思ってたんだけど」
そう言って唯は下を向いてしまう。
「そんなに気にするなよ。弁当作ってくれただけですごく嬉しいんだから。それに今朝はいろいろあったからな」
「・・・うん、そうだね。その代わり晩ご飯はがんばるね」
拓の言葉に唯は顔を上げガッツポーズを取る。
「・・ねぇ、唯ちゃん?」
二人のやり取りを黙って見ていた綾乃が唯をじっと見つめながら
「その制服ってどこの学校の?すごくかわいいけど、この辺じゃ見かけたこと無いし」
着ている制服について尋ねる。
「これですか?この制服は前の学校のですよ。前の学校は女子校で、制服がかわいいから人気のある所だったんですよ」
そう言って手を広げて一回転する。すると、それによって広がったスカートを突然吹き抜けた風が捲り上げる。
「きゃあっ・・・もうっ。・・あっ、兄さん…その、見えちゃった?」
捲れ上がったスカートを両手で押さえながら、真っ赤な顔をし消え入りそうな声で聞いてくる。
「あ〜っと、いや、まあ、その・・・すまん」
気まずそうな表情で答えている拓だが内心は(白…白か)と先ほど見えた唯の下着を思い出し、しっかりと記憶に刻み込んでいた。
「はうぅ〜、恥ずかしいよぉ〜」
自分から聞いておいて、いざ見られたとわかると唯はただでさえ赤くなっている顔を耳の先まで赤くしてそのまま俯いてしまう。
二人の間に気まずい空気が流れる中、綾乃は口元に手を当てて必死に笑いをこらえている。
拓は二人に挟まれながらどう対処してよいかわからず、ただ無言で歩き続けた。


「それじゃあ兄さん、綾乃さん、また後でね」
校舎の中の主な場所を説明し終えた所で職員室の前にさしかかり唯が立ち止まる。
「ああ、それじゃあな。ちゃんと挨拶するんだぞ」
「がんばってね唯ちゃん」
立ち止まった唯にそれぞれ声をかけて二人は教室へと向かう。
「唯のやつ、大丈夫かなぁ。なんか心配だなぁ」
唯と別れた後、拓は何度もそうつぶやいて後ろを振り向いていた。
「もう、水島君ったら心配性なんだからぁ。唯ちゃんだって子供じゃないんだから大丈夫よ」
綾乃は笑いながら拓の背中を叩く。
「いや〜まあ、そうなんだけどさ。どうしても気になっちゃってさ」
「ふ〜ん。水島君って妹さん思いなんだね」
照れながら頭をかく拓を意外そうに見ながらつぶやく。


「…」
たあいも無い話をしながら二人が教室に入ると、それまで賑やかだったのが嘘の様に一気に静まり返る。
「?、どうしたのかな?みんな静かになっちゃったよ?」
教室内の変化に、綾乃は訳が分からず隣の拓に尋ねる。
一方拓は、なんとなく自分に集まる視線を感じながらも
「…さあ、なんなんだろうな?」
と特に気にした様子もなく席に向かう。すると神谷が声を掛けて来る。
「ついに時間の感覚までおかしくなったか?拓」
「・・なんだよいきなり。朝っぱらからケンカ売ってんのか?」
そう答える拓の目の前におもむろに時計を差し出す。
「いま、何分かわかるか?」
「・・・馬鹿にしてんのか?8時15分だろ?」
いきなり意味の分からない質問をされ、拓は訳が分からないまま時刻を読む。
「なんだ、分かるじゃないか。それじゃ、何でこんな時間に来たんだ?」
神谷は空いていた席に座ると珍しいものを見るように聞いてくる。
「なんでって、唯に学校の中を案内しようと思ってな」
「そうか、彼女今日から通うのか。以外に早いんだな」
向き合って話をしていると松田が近づいてくる。
「よぉ、二人そろって何の話をしてるんだ?俺も混ぜろよ」
「いや、そんな面白い話じゃ…」
「こいつの妹さんが今日からこの学校に通うんだってよ」
松田の問いかけを適当に流そうと思っていた拓だったが、そんなことを知ってか知らずか神谷は話していた
内容をそのまま松田に言ってしまう。
「なにぃ〜、唯ちゃんがうちの学校に転入だって?おい拓、どうして昨日言わないんだよ」
「うるせぇなぁ、もう。お前がそうやって騒ぐから言わなかったんだよ。大体お前に関係ないだろ」
一人盛り上がる松田に拓が半分切れながら言う。
「大体なぁ、お前も言うんじゃねーよ。わざと言わなかったのに。ったく」
そう言うと拓は力無く机にうつ伏せてしまう。
(そういや、唯のやつ大丈夫かな?)
拓がそう考えると同時に担任が来てHRが始まった。


「えと、水島唯と言います。これからよろしくお願いします」
黒板から向き直るとそう言ってペコリとおじぎをする。
「と、ゆう事だからみんな仲良くするようにな」
教師はそう言うと空いている席に座るように指示する。
「よろしくね。水島さん」
席に着いた唯に隣の席の女生徒が声を掛けてくる。
「うん、こちらこそよろしく。…えっと」
唯も挨拶をしようとするが名前がわからず言いよどんでいると
「ああ。あたしは奈々実、椎名奈々実だよ。名前で呼んでくれていいから」
と奈々実が笑いかけてくる。それに答えるように
「うん、よろしくね奈々実ちゃん。私のことも名前で呼んでね」
と笑い返した。


「はあ、やっと終わった。四限目の数学の授業ほどきついものは無いな」
四限の授業が終わったばかりの教室内で拓が伸びをしながら呟く。
するとどこからとも無く神谷が近寄ってきて
「いや、お前はずっと寝ていただけだろう?」
と拓の様子を観察していたのか、背後から呟く。
「うわっ、お前なぁ人の独り言につっこむんじゃね〜よ。つーかどっから湧いたんだよ」
「湧いたって、俺は虫じゃないぞ。大体同じ教室にいるんだからこれくらいの接近は簡単だろう」
拓に文句を言われながらも言い返す神谷。二人の様子を眺めていた松田だったが
「おい、さっさと飯食いに行こうぜ。藤宮さんもう行っちゃったぞ。今日も一緒に食うんだろ?」
と痺れを切らして先に行ってしまう。
神谷も松田と行ってしまった為、拓は一人天井を見上げて唯が来るのを待つことにする。
しばらく天井を眺めていたが、再び襲ってきた眠気の前にあっさりと降伏してそのまま眠ってしまう。


拓が眠りに落ちるとすぐに小さな足音が近づいてくる。
「・・さん。兄さん」
誰かに揺り動かされる感触と聞き慣れた声に目を覚ますと唯が困ったような顔をして立っていた。
欠伸をかみ殺しながら立ち上がると唯が急かす様に手を引く。
「わかったから引っ張るなって」
言いながら歩き出した時、残っていたクラスメイトの視線を感じたがそのまま中庭に向かった。

中庭に着くと他の三人はすでに昨日と同じ場所に座って話をしている。すると、二人に気づいた綾乃が大きく手を振る。
それに気づいた唯も手を振ろうとするが拓に頭を押さえられ止められてしまう。
「よう、ずいぶんと遅かったな。何してたんだ?」
ベンチに座ると同時に松田が声を掛けてくる。
「ああ、唯が来るのが遅かったからな」
「そんなこと言ったってぇ〜。兄さんの教室の場所聞いてなかったんだからしょうがないじゃない」
拓がめんどくさそうに答えると、その内容に唯が文句を言う。
その様子を見ていた三人が口々に
「ほんと仲がいいよね」
「拓が悪いんじゃないか?」
「…漫才?」
と三人そろって好き勝手なことを言っている。拓はそれを無視して弁当箱を開ける。
「おっ?なんだよ拓、今日は弁当かよ。しかも唯ちゃんの手作りと見た。いいね〜」
「ん〜?俺は別によかったんだけど唯作ってくれたからな。それに食費も浮くしな」
松田とそんなやり取りをしながら弁当に箸を伸ばすと、唯がじっと見ているのに気付く。
「ん?なんだよ唯。なんか付いてるか?」
「え!ううん、何でもないから。さあ、食べて食べて」
声を掛けられかなり派手に驚いた唯だったが、何事も無かったかの様に弁当を食べるよう進めてくる。
「そんな急かさなくたって食べるって。それじゃ、いただきますっと…うん美味いぞ」
卵焼きを一口食べてそう言うと、唯は「よかった〜」と言いながら自分も食べ始める。
「なんだよ「よかった〜」って。お前まさか自分の作った料理に自信がなかったのか?」
拓が肘で突きながら言うと唯は焦りながら
「そ、そんなことは無いけど。味付けが兄さんの好みに合うかなって思ってね」
「そんなん、唯の好みで合わせてくれたらいいのに。そんなに変わんないって」
そう言うと、隣に座っていた綾乃が服を引っ張り
「だめだよ、水島君。そんなこと言っちゃ。好きな人にはおいしいものを食べてもらいたいものなの、ね」
拓の顔の前に指を立ててまじめな顔をして言った後、唯に向かって笑いかける。
「えっ、わ、わたしは別に好きとか嫌いとかじゃなくて単に兄さんにおいしいものを食べてもらいたかっただけで…」
唯は綾乃の言葉で耳まで真っ赤になり、消え入りそうな声でそう言うと下を向いてしまう。
「それにしても、うらやましい限りだな拓。こんなかわいい娘と二人暮しだなんて」
真っ赤になった唯を拓が眺めていると横から拓にしか聞こえないような声で神谷が言ってくる。
「何が言いたいんだ?お前は」
一方拓は意味がわからないといった感じで聞き返すが
「つまりだ、このおいしい状況下でいつまでお前が理性を保てるか、と言ってるんだよ」
そう鼻で笑いながら言われ、唯が妹になってから意識していたことを言い当てられ言葉に詰まってしまう。
「なっ、何を言い出すんだいきなり。唯は妹だぞ、そんなことあるわけないだろ」
拓は詰まりながらそう言う。がもちろん嘘だった。
「…嘘だな。拓、俺とお前は付き合いが長いんだからそんな嘘すぐに見破れるぞ」
「…なんで嘘だって言い切れるんだよ」
反論に切り返してきた神谷に理由を聞くと
「…そうだな、色々あるがわかりやすいのは目だな」
「目?」
今ひとつ要領を得ない神谷の言葉に拓はオウム返しに聞き返す。それを気にせず神谷は言葉を続ける。
「そう、目だ。妹を見ている時のお前の目は一番優しい目をしているからな」
「…そうか、目ねぇ。参考になったよ」
神谷の言葉を黙って聞いていた拓はそれだけ言うと黙り込んでしまった。


「ねぇ、兄さん。…兄さん?兄さんってば〜」
考え事をしているうちに眠っていた拓は唯に呼ばれても気付かず、体を揺すられ始めて呼ばれていることに気付いた。
「ん、どうした?」
「どうした?じゃないよ〜。早くしないと次の授業始まっちゃうよ」
その言葉に辺りを見ると、中庭にいた生徒は自分達だけだった。
「授業始まるって、今何分だ?」
そう言って時計を確認するより早く
「ついさっき予鈴が鳴ったけど?」
と唯が答える。ちなみに予鈴=授業開始五分前である。
「鳴ったけどって…ほらっ早く行くぞ、遅れちまう」
そう言ってのんびり構えている唯の手を取って走り出す。
「そういえば他の連中はどうした?」
「ん〜っと、授業に遅れたくないから先に行くって行っちゃったよ」
綾乃達の姿が見えなかったので聞いてみると予想通り先に帰っていた。
そこで唯が一人残っていたのが気になり聞いてみると
「え?だって兄さん一人で置いといたらずっと寝てるかもしれないし。ずっと起こしてたんだよ?」
とそれが当たり前のように答える。照れくさくなった拓は唯の頭を少し力を入れてなでる。
いきなり頭をなでられたのに驚いた唯だったが嫌がることも無くおとなしくしていた。


「それじゃあ唯、また後でな」
「うん、校門の所で待ってるからね」
中等部と高等部の境で二人はそう言って互いの教室に向かって走り出す。
拓はほとんど誰もいなくなった階段を全速力で3階へと走る。
「…ったく、なんで…一年の教室はっ…一番上なんだよっ」
文句を言い切ると同時にチャイムが鳴る。と同時に目の前を歩いている教科担当の講師を見つける。
「…よしっ、まだ間に合う」
講師との距離は約五m。拓はラストスパートをかけ講師を抜き去りそのまま教室に駆け込む。
「…なっ…なんとか間に合った…」
教室に駆け込んだ拓が席で息を整えていると特に急いだ様子も無くのんびりと講師が入ってくる。
挨拶の後教室を見回した講師は息を切らしている拓を見つけると
「ああ、さっき追い抜いていったのは水島君だったんですね。ダメですよ、早めに教室に帰ってないと」
と怒り始める。ちなみにこの講師はクラスの担任で海原夏。小学生と間違えられるほど小柄な体格で彼女
いわく身長は145cmとのこと。担当教科は英語。
「そういえば水島君、さっき中庭で女の子と一緒に寝てましたよね?確かにお昼寝は私もよくしますけど
ほどほどにしないとダメですよ」
拓の事などお構い無しに話し続ける夏先生。その内容に反応して教室内が次第にざわつき始める。
「ちょっと夏先生っ、お説教なら後で聞きますから。今は授業しませんか?」
すっかり賑やかになってしまった教室内で自分に集まる痛い視線を無視して夏先生に言うと
「そうですか?珍しいですね水島君がそんな事言うなんて。まあ、そんなに勉強したいんでしたらちょうどよかったですね」
微妙にとげのある言葉に引っかかりを感じ聞き返すと夏先生は教室中に聞こえる声で
「は〜い、みなさん聞いてください。今日は小テストをしま〜す。はい、静かにして〜」
夏先生は叫びながら出席簿で教卓をバンバンと叩く。夏先生のいつもの手だ。
「大丈夫、ちゃんと授業を聞いていればわかる問題ばかりですから」
そう言われ夏先生の言葉と共に配られた問題は難しい長文問題ばかりだった。


「唯ちゃん、一緒に帰らない?」
HRも終わり、一気に騒がしくなった教室。
教科書をカバンに詰め込んでいると奈々実が声をかけてくる。
「うん、いいけどちょっと待ってね」
そう言って急いで本を詰め込むと奈々実と一緒に席を立つ。
「唯ちゃんってさ、お兄さんやお姉さんっているの?」
「うん、兄さんがいるけど。奈々実ちゃんは?」
「私は妹がいるの。かわいいんだけどナマイキで」
「でも妹や弟っていいなぁ。やっぱり」
そんなたわいも無い話をしながら歩いていると誰かが後ろから声をかけてくる。
「唯ちゃん。今帰るとこ?」
「あっ綾乃さん。はい、そうですけど」
振り返り声をかけてきたのが綾乃だとわかると通行の邪魔になるのもかまわず話を始める。
「それより、帰るんなら急いだほうがいいんじゃないかな?水島君HRが終わると急いで出て行ったから
多分もう校門にいるんじゃないかな?」
「えっほんとですか?それじゃあ急がないと。綾乃さんまた今度お話しましょうね」
唯はそう残すと奈々実と一緒に拓の待つ校門へと走った。


「ちょっと早く来すぎたかな」
もう何度目になるかわからない独り言を言って時計を確認する。
「そろそろ出てきてもよさそうなもんだが…友達と話でもしてるのか?まあ、制服違うから見逃すことは無いだろ」
次々に下校する生徒の流れに目をやるが唯らしき生徒は見当たらない。
「まさか、初日から掃除当番ってことは無いだろうな。…やっぱり教室に行ったほうがいいかな?」
拓が様々な理由を考えていると唯らしき女の子が走りよって来る。
「ハァッ…ハァッ、ごめんね兄さん。遅くなっちゃって」
よほど長い距離を走ってきたのか、唯の長い髪は乱れ、息もすっかり上がっている。
「ああ、それは別にいいからまずは息を整えろって」
拓がそう言うと唯は無言で頷き深呼吸を繰り返す。辺りを眺めていると女の子が一人向かってくる。
「唯ちゃ〜ん。もう、どこ行っちゃったんだろ。…あっ、せんぱ〜い」
女の子は拓を見つけると急いで走りよって来る。
「なんだナナじゃないか。何やってんだこんなところを走り回って。誰か探してんのか?」
「そうなんですよ。ナナのクラスメイトで転校生なんです。制服が違うからすぐわかるはずなんですけど」
そう答えながらナナは辺りをキョロキョロと見回す。
「なぁ、それってもしかして…」
拓はまさかと思い自分の後ろで息を整えている唯を指差す。
「あ〜っ、唯ちゃん。いきなり走り出すから驚いちゃったよ」
唯を見つけたナナは思わず叫ぶ。その声に唯は顔を上げると
「えっ?あ、奈々実ちゃん。ごめんね置いて行っちゃって」
と申し訳なさそうに言う。拓は二人のやり取りを見て
「なんだ二人とも同じクラスになったのか」
と言うと二人同時に
「うん、そうだよ」
「はいっ、そうなんですよ〜」
と答えお互いの顔を見て笑いあう。
「そうか、まあナナが一緒なら安心だな。それじゃ帰るぞ」
「ええ〜っ、もう帰っちゃうんですか?せっかくだから遊んでいきましょうよ〜」
「勘弁してくれよ、今日は眠いんだよ。行きたきゃ二人で行ってこいよ」
遊びに行こうと誘う奈々実だが拓に反対されてしまい唯と並んでおとなしくついてくる。
「ところでせんぱい。唯ちゃんとはどうゆう関係なんですか?随分と仲がいいみたいですけど」
拓が唯と話しているとその様子が気になったのか奈々実が尋ねてくる。
「ん?なんだ唯、ナナに言ってなかったのか」
「うん、兄さんに会ってから紹介しようと思ってたから。えっとね奈々実ちゃん、この人はわたしの兄さんなの」
そう唯が奈々実に告げるが奈々実は何を言っているのかわからないと言った様子で「え?」と聞き返してくる。
「いや、だからな。俺と唯は兄妹で、唯は俺の妹だってことだ。わかったか?」
「で、でもせんぱい兄弟姉妹はいないって言ってませんでしたっけ?そもそも全然似てないじゃないですか」
奈々実はしごくもっともな事を言う。拓はここ二日間で何度もした説明をする気にもなれず
「家庭の事情だ。それ以上でも以下でもない」
と言って歩調を上げる。
「ごめんね、奈々実ちゃん。兄さん同じ質問ばかりされてるみたいで。またわたしから説明するから」
「うん、また今度ね。あ、せんぱいがなんか言ってる。早く行こう」
そう言って唯の手を取ると奈々実は拓の元へ走っていった。


「それじゃあ、せんぱい、唯ちゃんまた明日」
「うん、またね」
「ああ、それじゃ」
中央交差点でそう言って奈々実と別れ二人で歩いていると、難しい顔をして唯が聞いてくる。
「兄さんと奈々実ちゃんってさ学年違うのにずいぶん仲がいいんだね。呼び方もあだ名だし」
「ああ、あいつとは去年の学園祭の時に実行委員で一緒になってそれで懐かれた。
 あだ名はそっちの方が呼びやすいからだよ。さっきから難しい顔してたのはその事を考えてたからか?」
答えてから唯の顔を見ると、拓の言葉でさらに表情を険しくする。
「う…ん。なんでかな、奈々実ちゃんと兄さんが仲良くしてるの見てると、なんかこう胸の中がすっきりしないんだよね」
「お前、それはヤキモチってやつなんじゃないのか?」
そうつぶやくと唯は首を傾げて
「えぇ、なんで私が奈々実ちゃんにヤキモチ焼くの?ありえないよ」
と言うと、一人で先に帰ってしまう。拓は後を追うこともせずのんびりと家に向かった。


「ねえ、兄さん。これって何をしてるのかなぁ?」
夕食を食べながらテレビを見ていた唯が突然訊ねてくる。
「…これか?」
テレビに映っていたのはドラマのベッドシーンで拓は言葉を詰まらせる。
「うん、こうゆうのってよく見るけど何してるのかなぁ?兄さんは何してるか知ってる?」
「そりゃ…まあ知ってるけど。…本当に知らないのか?」
「うん。お父さんやお母さんに聞いても教えてくれなかったし。兄さん…教えて欲しいな」
唯はまっすぐに拓を見つめる。拓はテレビの画面を見ながら
(どうやら本当に知らないみたいだな。今時小学生でも知ってそうなもんだけどなぁ。
 まあ、なんとなくそうゆうのに疎い感じはするけど。しかし、俺が教えてもいいもんかな?
 つーか、あの表情は反則だよな。…しょーがない、教えてやるか)
拓はイスに座り直すし咳払いを一つすると
「唯、学校の授業で保健体育はやったよな?」
「うん、習ったよ」
「その中で性教育ってのやったろ」
「うん、やったけど…こうゆうのはやらなかったよ?」
画面を指差しながら唯が答える。
(確かに教科書でセックスの仕方まで教えないよなぁ)
腕組みしながらそう思った拓は、分かりやすい話から始めることにする。
「えっと、唯はどうやって子供を作るか知ってるよな?」
「うん、知ってるよ。たしかセックスってゆうのをするんだよね?」
「ああ、合ってるよ。具体的にどんな事をするのかは知ってるか?」
そう訊ねると、さすがにそこまでは知らなかったのか首を横に振りながら
「どんな事をするの?」
と聞いてくる。拓は頭を掻きながらしばらく考えた後
「えっとだな…女の人の大事な所に男の人の大事な物を入れるんだよ」
と、かなりぼやけた説明でごまかす。唯はその説明で納得したのか「なるほど〜」とつぶやきながら
洗い物をしに台所へと向かう。すると思い出したように
「ねぇ兄さん。セックスって気持ちいいのかな?」
と聞いてくる。その言葉にお茶を飲んでいた拓は盛大に噴き出してしまう。
「ど、どうしてそう思うんだ?」
口の周りを拭きながら訊くとテレビを指差しながら
「だって、女の人すごく気持ちよさそうな顔してるもん」
と答える。苦笑いをしながら拓は
「そうだな…気持ちいいらしいぞ」
と答えながらお茶を入れ直す。唯は「ふ〜ん」と言うと洗い物をしに流し台に向かう。
聞こえてきた水音を聞きながら拓は大きな溜息をつく。
(はぁ、すごい夕食だったな。まさかここまで訊かれるとはな…。なんか、まだ終わりそうに無いな、今日は)
お茶を飲みながらそんな予感をする拓だった。


「兄さん、入ってもいい?」 風呂から上がり部屋で雑誌を読んでいると少し眠そうな声で唯がノックの後に言う。
特に何をしているわけでも無かったのでドアを開けてやると唯はなぜか枕を持っていた。
「ああ、どうぞって。なんで枕なんか持ってるんだ?」
「え?だって兄さんの枕使うわけにもいかないでしょ?枕無いと寝にくいしね」
そう言ってベッドの側まで行くとそれが当たり前の様に拓の枕の横に自分の枕を並べる。
「おい、なんで俺の枕の横に自分の枕を置くんだ?」
「え?そんなの一緒に寝るからに決まってるからじゃない」
ベッドに寝ころび答える唯を見て自分の部屋で寝る気が無いと思い諦めて唯の隣に座る。
「そう言えば、学校はどうだった?」
「う〜ん、別に普通だったよ。みんな優しいし、友達もたくさんできたし」
そう楽しそうに今日学校であった事を報告する唯。その様子を眺めながら相づちを打っていると突然唯が
「そうだ、ねえ兄さん。クラスの子達が話してたんだけど、オナニーって何?」
「…は?今何て言った?」
夕食の時のSEX発言に続く唯の口から出るとは思えない言葉に、思わずオウム返しに聞き返す。
「だから、オナニーって何って聞いたの」
「…今度はそう来るか」
「ねぇ、知ってるんでしょ。教えてよ〜」
腕を抱くように掴まれ激しく揺すられる拓。
(…ちっさい割にはやわらかいんだな。しかし、このままってのも面倒だな…)
そう考えた拓は唯に頭を掴んで腕から引き離す。
「わかった、教えてやるからちょっと落ち着けって」
そう言って自分も一息付く。
「ところで、友達はオナニーってどんなことって言ってたんだ?」
「え?えっとね…なんか気持ちよくって、気分がスッキリするって言ってたよ」
(ふ〜ん、意外にちゃんと知ってるじゃないか。つーか唯の年頃でオナニーする子っているんだな)
唯の説明を聞きそう考えていると唯の視線に気付き話を続ける。
「ま、まぁ大体あってるな。…やり方は聞いたか?」
その言葉に首を横に振る。
「それじゃあ教えてやるよ。まずは胸を触るんだ」
「胸?胸なんか触っても気持ちよくならないよ?それにわたしそんなに無いし…」
胸を触るように言うと胸に手を置き不安気な顔で拓を見る。
「大丈夫、小さくても気持ちよくなれるから」
「う、うん。わかったやってみる」
拓に説得され唯は胸の上で手を動かし始める。
「んっ…な、なんか…くすぐったいような感じがするよ?」
「ああ、それがだんだん気持ち良くなってくるから。ただ動かすだけじゃなくて揉んでみるのもいいぞ」
拓の言葉に頷き胸を揉もうとするが、胸が小さいうえに拓のシャツを着ているのでうまく揉む事ができない。
「…兄さん、うまく揉めないよぅ。どうしたらいいの?」
しばらく自分の胸と格闘していた唯だったがついに諦め涙目で聞いてくる。
「う〜ん…じゃあもうちょっと力を入れて撫で回してみるか。あと乳首触ってみるのもいいかもな」
アドバイスを聞いた唯は早速実行に移す。
「ん…ふぅっ…さっきより…全然いいよぅ…。そうだ乳首も…んんっ…ああっ」
アドバイス通りに左手は乳房を右手は既に硬くなっている乳首を弄り始め、ベッドに寝転がる。
「あっ…うんっ…ねぇ、なんか気持ち良く…なってきたかも」
「そのまま続けて、もっと良くなるから」
「う、うん…はぁっ…んんっ」
初めはゆっくりだった手の動きが快感によりだんだんと激しくなり声も大きくなってくる。
さらに無意識のうちに太股をすり合わせる。
(そろそろかな)
唯の様子を見て拓は唯の手を掴み、シャツが捲くれ上がりむき出しになったショーツの上に置く。
「ん…兄さん、何するの?」
右手を掴まれ乳首からの快感が途絶え唯が「どうして?」といった感じで聞いてくる。
「大丈夫、今よりもっと気持ち良くなれる方法を教えてやるからな」
そう答えて唯の手を布越しに割れ目の上に置くと自分の手を重ねて力を入れる。
「んあ、ああっ」
今までに無いほどの強い快感に唯は仰け反りながら声を上げる。
「どうだ唯、さっきより全然いいだろ」
力を入れるのを止め、唯が落ち着いてから聞くと首を何度も縦に振って答える。
「よしよし、それじゃあ今度は自分でやってみようか」
唯の頭を撫でながら重ねていた手をどけやってみるように促す。
「ふえぇ、自分でやるの?…ちょっと怖いかも」
「大丈夫だよ。初めは少しずつでいいから、唯のやりたいようにやってみるんだ」
怖がる唯を優しい口調で安心させてやると、頷いてから少しずつ手を動かし始める。
「んっ…くふぅ…これ、いいよぅ」
さすがにいきなり直に触るのは怖いのか、ショーツの上から割れ目をなぞっているだけだがそれでも
胸からの快感よりは強いらしく何度も体が震える。
しばらくの間割れ目を弄っていた手が止まり、拓の方を見る。
「ん?どうした」
「…あのね…おしっこ、漏れちゃったみたいなの。ごめんなさい」
「ん〜…ちょっと触るぞ」
「んんっ、兄さん?」
そう言って唯の下着に触れると確かに濡れている。しかし、唯の言うおしっこではなく粘りのある液体で。
「大丈夫、確かに濡れてるけどおしっこじゃないよ」
下着を触って濡れた指を唯の唇に擦り付けながら言うと唯は
「えっと…じゃあなんなの?…なんか変な味がするよ」
と言って濡れた唇を舐める。
「これは愛液って言うんだよ」
「あいえき?」
「そう。愛の液って書くんだよ。女の人が感じると出てくるんだよ」
愛液がどんなものかを説明してやるが唯は既にオナニーを再開していて全く聞いていない。
「ったく、せっかく説明してやってるのに聞いてないし。」
「んんっ、はあぅ、……兄さん、何か言った?」
股間への愛撫を中断して唯が尋ねてくるが、拓は「なんでもない」と首を振る。
唯の頭の中にはもはやオナニーによる快感のことしかないのか、拓が間近に見ていることすら気にしていない。
(それにしても、女のオナニーって初めて見たけど、かなりエロいな。しかも、唯がしてるわけで…)
時折強い快感に震えている唯の姿を見ながら、拓はつい妄想にふけってしまいその結果、自然と前かがみになっていく。
「んっ、ああっ、に、兄さん。き、きもち、いいよぉ〜」
段々と大きくなってきた快感の中、上ずった声で叫ぶ。股間ばかりを愛撫している唯の空いている左手を胸に添えさせる。
「ふあっ、にいさん?」
「こうやって、胸も同時にやったらもっと気持ちよくなるぞ」
突然の胸からの快感に、驚く唯だったが、拓が添えられている唯の左手で乳首を押し込むと、刺激が強すぎたのか唯は大きく仰け反る。
「ひうっ、ふあぁ〜、な、何したの?」
「唯の興奮して大きくなった乳首を弄っただけだよ」
拓の言葉に、唯も手を動かして自身の乳首を確かめる。
「ほんとだ、こんな…にっ、おお…きくっ、なってるぅ」
乳首が大きくなっていることを自分で確かめたことで興奮がまた強くなったのか、まともにしゃべれなくなってきている。
「あっ、ふうぅ、もっと、きもちよくっ、なってきたよぉ。」
小さな胸を責める手は、乳首を中心に小さな円を描き、割れ目を責める手は下着越しでは物足りなくなったのか、ショーツの中に潜り込み大きく上下に動いている。
「やっ、なにっこれっ。にいさんっ、なにかくるよぅ」
絶頂に迎えようとしている唯が、初めての感覚に戸惑い愛液に濡れた手で拓の手を掴んでくる。刺激の弱い胸への愛撫は続けたままだ。
「だいじょうぶだよ。そのまま気持ちいいのを受け入れてごらん」
拓は優しく言って掴んでいた手を元の位置へと戻してやる。唯も安心したのか、再びショーツの中に手を潜らせより激しく愛撫を再開する。
「あっ、はあんっ、ふっ、ふうぅっ、なんで、さっきよりよくなってるよぉ」
おそらく、無意識のうちに拓の言葉通りに強くなった快感を抵抗無しに受け入れているからであろう。
「やっ、なんかくるよぅ、おっきなのがくるのぉ」
唯の愛撫はさらに早くなり、愛液はショーツから溢れ、シーツにシミを作っている。
「あっ、ああっ、んあああ〜〜」
小刻みに跳ねていた唯の体が、一際大きく跳ねると同時に大きな喘ぎ声を上げて唯は絶頂に達した。
「っはぁ、はぁ……」
唯はぐったりと弛緩し、だらしなく開かれた両足は快感の名残で時折痙攣している。
「……ねぇ、兄さん?」
先程まで達した余韻で視線の定まっていなかった唯だったが、少しは回復したらしく拓に話しかけてくる。
「ん?どうだった、初めてのオナニーは」
「すごかったよぅ、友達が話してたのよりぜんぜんすごかった。なんかね、小さな波がだんだんおっきくなってくみたいに気持ちいいのもおっきくなってくの」
唯は愛液にまみれた右手をショーツから抜くのも忘れて話している。
しかし、不意に目つきがトロンとしてくる。時計を見ると既に日付が変わっていた。唯はとっくに寝ている時刻だった。
「…なんか、眠くなってきちゃった。…すぅ…」
そう言ったのもつかの間、唯はそのままのかっこで寝息を立て始める。
「…まあ、初めてのことで疲れただろうし、昨日ならもう寝てる時間だしな。それにしてもすごいかっこうだな」
拓は改めて初めての絶頂を迎え、気持ちよさそうに眠る唯の姿を見る。
着ていたシャツはすっかりはだけ、ブラも着けていない小さな胸が丸見え。
ズボンなど初めから穿いていないため、愛液に濡れ肌に張り付いたショーツも丸見えになっている。しかも愛撫していた右手は未だショーツの中だ。
「…はぁ、もういいや。めんどうだしこのままでいいや。おやすみ、唯」
唯はそのままの格好で上に毛布をかけてやり、部屋を出て行く拓。
「……あんなもん見せられて、寝られるかよ」
拓はそう呟いてトイレへと入っていった。


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